「時間という一本のロープにたくさんの写真がぶら下がっている。それをたぐり寄せて思い出をつかもうとしても、私にはそのロープがない」――たとえば〈記憶障害〉という術語にこのリアリティはありません。ケアの拠り所となるのは、体験した世界を正確に表現したこうした言葉ではないでしょうか。本書は、「レビー小体型認知症」と診断された女性が、幻視、幻臭、幻聴など五感の変調を抱えながら達成した圧倒的な当事者研究です。
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