長期にわたる出生率の低下と長寿の伸長により、日本の多くの地域で高齢化・人口減少は深刻化しています。大きな地方都市の駅前でもシャッターを閉めた店が多くなり、地域社会の衰退は深刻です。最近は都市部でも高齢者が目立つようになり、空き家が増えています。
こうしたなか、要介護者、認知症、障がい者、貧困、ひきこもり、不登校、無業・失業者などの複合課題を抱えた家族が増加し、社会から取り残されています。そうした制度のはざまに陥ってしまった地域の困窮者は、「助けて」という声も上げられず、困窮のスパイラルにはまっているのです。
本書は、そんな地域の困窮者を支えるために格闘している人や組織を「しんがり」と呼び、彼らの活動をまとめました。「しんがり」たちは、制度疲労により劣化しつつある地域社会をどのように支えているのでしょうか。地域の困窮との闘いかたを、「しんがり」たちに教えてもらいます。
なお、本書は2014年度から2018年度の5年間にわたって行われた慶應義塾大学経済学部の全労済協会の寄附講座「生活保障の再構築――自ら選択する社会福祉」の中から、11人の講義を選び、編集しました。