巨大企業・明治化成を辞めて故郷の博多に帰り、小さなバーを営んで暮らしてきた
藤川啓吾。ある日、かつての同僚で今は明治化成の常務に上り詰めた神代の妻・
美奈が現れる。6年前、啓吾は東京を離れる折に美奈の必死の願いを断っていた。
美奈は言った。「もしも私があなただったら、こんな私のことを置いていったり絶対にしない」。
過去に決着をつけられず店の経営もジリ貧の啓吾、
複雑な人間関係をまるごと東京に置いて福岡にやってきた美奈は、
一緒に過ごすことで純粋な喜びを感じるようになる。だが、あるひとつの情報が、
啓吾を疑心暗鬼にする――
「心が通う」とは、どういうことか?
心が通ったとき、そこには説明のつかない偉大な力が生まれているのではないか?
人生の半ばを過ぎた大人の男女が、本当に求めるものに対して研ぎ澄まされてゆく。
企業の倫理、人生の選択、男女の深淵と希望を、福岡を舞台にあますところなく
描きこんだ長編恋愛小説。