1980年代、刻々と変容する瀬戸内の海と人々の暮しを記憶しておきたいと思い立った倉掛喜八郎氏は、山陽、四国沿岸と150の島を歩き、人々と暮らしの風景を描いた。
そんなある日、ぜひ記録に残しておきたいという思いに駆られる夫婦と出会う。夫婦は、愛媛県松山沖に浮かぶ二神島と今では無住の島となった由利島で暮していた。タコツボ漁とミカン耕作を営む二人のもとへ足掛け十年通い、おだやかな海を見おろすミカン畑で、漁に出た船の上で、問わず語りの話を聞いた。
本書には、夫婦の話と現地でのスケッチをもとに仕上げたペン画作品約50点を収録。
島の風景、そこに生きる人の姿を力強く描いたペン画とともに、貧しくも心豊かに昭和を生き抜いた二人の話があざやかに蘇る。
寄稿に加藤千洋(平安女子大学客員教授、元テレビ朝日「報道ステーションコメンテーター」他