琵琶湖で娘を亡くした父親が、ヒマラヤでの月見や、湖岸の十一面観音をめぐるうちに心の平安を得ていく物語。今に続く、「観音ブーム」の源流、「聖地巡礼」の先駆けとも言えるこの小説は「遺体のあがらない死」という非常に現代的なテーマを取り扱った作品でもある。突然訪れる大切な人の〝もがり〟の時間をどう過ごせば良いのか。芥川賞作家の井上靖が、現代人へ伝える「愛する人の弔い方」。舞台となった近江・観音の里の住民たちによる復刊運動を経て出版。