19世紀と20世紀を通して破竹の勢いで進展してきた帝国主義。イギリスやフランスをはじめとした西洋諸国は、世界地図のアジアやアフリカの部分を「われら」の土地として塗りつぶしていった。宗主国の国民は、また植民地化された「原住民」は、それぞれこの事態をどうとらえていたのだろう。そして文化は、帝国主義とどのような関係にあるのか。とりわけ、ルカーチによれば「近代」の形式である小説、それもその最高の芸術的成果が帝国主義とどう絡みあってくるのか。サイードは、歴史意識を前提としつつも、文学の地政学ともいうべき方法論を駆使して、両者の関係を考察する。