旗本や御家人にかわって俸禄米を幕府の米蔵から受け取り、市中の米問屋へ売り渡す札差。吉宗が将軍になって以来、江戸でこの札差くらい発展した商売はない。幕府に公認され、手数料も定められ、金融も請け負うようになると、平十郎が継いだ辰巳屋の金庫からは、ついに金があふれ出した。だが、巷には、この金庫を狙う悪党どもが跡を絶たない。借金踏み倒しや無理難題を持ちかけてくる旗本や御家人、そして彼らに雇われている天敵・蔵宿師。江戸の経済犯罪と武士の悪行に敢然と立ち向かう札差平十郎の活躍を描く。長編時代小説。