タイトルを見て、「なにをあたりまえのこと言ってるの?」と思われたかもしれません。でも、ほんとうにそれは「あたりまえ」のことでしょうか。「人間であること」「人間として生きること」とはどういうことなのか、こどもに訊かれて即答できるおとなは、はたしてどれくらいいるでしょう?
新進気鋭の書き手と売れっ子画家がタッグを組み、このきわめてシンプルでむずかしい問いに挑んだのが本書です。文章を書いたのは、マインドフルネスとヨガのインストラクターでもあるS・ヴェルデ。彼女の才能に惚れこみ、みずから絵を担当してその創作活動をもりたてるのが、世界的ベストセラー『てん』や『ちいさなあなたへ』で知られるP・レイノルズです。
本書では「人間性」を擬人化したキャラクターである「ぼく」が、ときに傷つきながら、ものごとをつねに思いやりと共感の視点からとらえなおすことで前進する様子が描かれます。ずばりと本質をつく簡明な文章と、絵の力強い描線・炸裂する色彩がみごとにマッチし、人として生きること、たがいにささえあうことの喜びと希望が高らかに謳いあげられます。いっぷう変わっているのが、巻末にかんたんな瞑想エクササイズのガイドがついていること。そのためかおとなにも大人気で、刊行されるや否や50万部を売り上げ、ニューヨーク・タイムズの週間ベストセラーリストで1位を獲得しました(2018年10月21日、「こども向け絵本」の部)。
なお、本書は「世界のなかで、人としてすこやかに生きること」の意味をこどもといっしょに考える絵本シリーズの2作目にあたります。ほかに「愛」「平和」「ヨガ」「行動」を主題とする4作が発表されており(すべて未邦訳)、世界中で幅広い年齢層の読者を獲得、各国語に翻訳され、シリーズ累計100万部を記録しています。さらに近々2作が刊行予定です。
史上最悪の厄災にみまわれ、縮こまってしまいがちないまこそ、ご家庭や施設で本書をひもとき、こころとからだをほぐしていただけたら幸いです。(しまづ・やよい)