かつて、我が子に「将来どんな職業に就きたい?」と尋ねたとき、逆に「どんな職業があるの?」と聞き返され、答えに詰まってしまったことを覚えています。いったい、子どもたちはどうやって職業を選ぶのでしょうか? 職業紹介の本からでしょうか、それとも個々の会社案内を見て選ぶのでしょうか? そうした方法で本当に自分に合った職業を選ぶことができるのでしょうか? こんな疑問が、本書で紹介する「夢授業」をはじめたきっかけの一つです。
「夢授業」とは、ボランティア組織である「北九州キャリア教育研究会」に登録している職業人たちが、地元を中心に小学校・中学校・高校などに出向いて、それぞれが携わっている仕事について子どもたちに伝えるというものです。会場となるのは各学校の体育館で、ほとんどの場合、5、6時間目を使って行われています。つまり、正規の授業ということです。
授業を受ける子どもの人数によって変わりますが、通常20名から、多いときで80名の職業人が点在してブースをつくり、15分単位のセッションを五回も設けて、子どもたちからの質問を受けながら仕事の内容や職業観などを話していくことになります。こうして子どもたちはこの一日に、最大で5つの職種を知ることになります。
2013年からこの「夢授業」をはじめていますが、2019年末現在、研究会に登録された職業人は1000名を超えています。地方公務員、教師、看護師といったポピュラーな職種から、大人でも「そんな仕事あるんだ!」と驚くような仕事に就いている人たちもいます。考えてみれば、大人だからといってすべての職業を知っているわけではありません。ゆえに、教師のみなさんとも協力して、多くの職業人がボランティアで子どもたちのために「職業」を教えることにしたのです。本書で展開される「紙上版・夢授業」、読了後には、驚くとともにお住まいの地域で開催したくなることでしょう。(木原大助 北九州キャリア教育研究会会長)