○国際金融、国際経済、開発経済分野の研究で定評のある著者が、日米両国も含め、東アジア、中南米、欧州の新興国の国際比較をもとに、ここ30年にわたるグローバル経済統合の推進ダイナミズムとその背後にある構造的な変化、その意味を、短期的な経済の循環、風長期的な成長の構造、そして所得格差に焦点を合わせて解き明かします。
○本書全体を通じて、経済成長にとって高水準の投資(資本深化)こそが重要であることを指摘、グローバル経済におけるバリュー・チェーン(GVC)を含めた産業連関の構図を解き明かし、それらが、経済の地域集積・資産集積のパターン、所得・資産分配や社会的厚生に影響を与え、相互にフィードバックしていることを明らかにします。
○最近の東アジア新興国の景気循環はほぼ、国際資本市場から発した「金融循環」であり、資本市場固有のリスクがあるため、介入主義的マクロ金融政策が有効だ。IMFなどが推進してきた資本市場メカニズムを通じた調整を重視する自由放任的政策処方箋は効果がなく、新興市場国の金融脆弱性を考慮し、資本自由化を急がないことが必要であると説きます。
○情報通信技術(ICT)と貿易・資本の自由化が可能にしたバリュー・チェーン(GVC)に代表される貿易・投資を通じたグローバル化には、日・欧・米の先進国がそれぞれ東アジア・欧州・ラテンアメリカにおいて異質のリンケージのもとで地域集積を形成しているという特徴があること、新興市場は一つの同質的グループではないことを見誤らないことが重要であることを指摘します。
○さらに、この投資=資本蓄積と経済成長は、所得(資産)分配を不平等化する傾向が強く、長期的に成長・厚生を阻害する可能性があり、有効な所得再分配メカニズムが必要になることも明らかにします。