誰かを想うとき、人は嘘をつくのかもしれない。下町を舞台に静かな筆致で人の情を描く、傑作ミステリー集。信号のある交差点で車に轢かれ男が命を落とした。唯一の目撃者千賀和子は、運転していた会社役員熊谷の信号無視を証言。しかし裁判直前、被告の弁護人結城の許に、匿名の手紙が届く。和子の偽証を示唆していた。結城は法廷で手紙の内容を突きつける。動揺する和子はやがて真実を語り始める (「赤い証言」)。偽りの証言の裏にある心の闇を鋭く描く、傑作ミステリー集。