自分の声質へのコンプレックスから寡黙になった坂口孝文は、全寮制の中高一貫校・制道院学園に進学した。中等部2年への進級の際、生まれつき緑色の目を持ち、映画監督の清寺時生を養父にもつ茅森良子が転入してくる。目の色による差別が、表向きにはなくなったこの国で、茅森は総理大臣になり真の平等な社会を創ることを目標にしていた。第一歩として、政財界に人材を輩出する名門・制道院で、生徒会長になることを目指す茅森と坂口は同じ図書委員になる。二人は一日かけて三十キロを歩く学校の伝統行事〈拝望会〉の改革と、坂口が運営する秘密地下組織〈清掃員〉の活動を通じて協力関係を深め、互いに惹かれ合っていく。拝望会当日、坂口は茅森から秘密を打ち明けられる。茅森が制道院に転入して図書委員になったのは、昔一度だけ目にした、養父・清寺時生の幻の脚本「イルカの唄」を探すためだった――。