「非認知能力」は、未来を担うすべての子どもたちの心と体の成長に必要な能力です。
ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンは、子どものなかでも、IQ や読み書きのような「認知能力」よりも、やり抜く力・好奇心・自制心といった「非認知能力」の高い子どものほうが、将来挫折することなく成功する可能性が高いことを発見し、大きな話題となりました。
ただし、「非認知能力」は、人生を通じて恒常的に高められるものではありません。人生の最初の数年が、非常に重要な時期に当たります。そのため、幼児期に適切な教育を行うことが、潜在能力の基盤を形成し、「非認知能力」を高めると私たちは捉えています。すなわち、「5歳までのしつけや環境が、人生を決める」ということです。
さて、このような「非認知能力」は、何によって鍛えられるのでしょうか。さまざまなアプローチがあると思いますが、本書では「運動あそび」に着目しました。いうなれば、運動あそびを通して「挑戦する力」「考える力」「競争する力」「集中する力」「かかわる力」という5つの「非認知能力」の発達を促すことを目指しています。
幼児期は、楽しいことであれば、どんなことにも興味をもつ時期です。ですから、全身で「楽しい!」と感じることが何より大切です。それが、自ら進んで意欲的に取り組む姿勢を育む、「非認知能力」が高まる土台となります。そのため、子どもたちが「できた」「楽しい」「もっとやりたい」と主体的に取り組んでいける先生の様々な仕掛けが必要となります。
そこで、本書では、日頃より私たちが体操の現場指導に実践している「知的好奇心を高めつつ、さらに飽きさせない様々な取組」の数々を紹介します。