「日本主義」を媒介したことで、近代の仏教思想はどのような表現が(不)可能となったのか。また仏教者・知識人たちは、「日本主義」に染められていく時代といかに対峙し、いかに仏教を再編していったのか。
支配的イデオロギーに再解釈を加えていくさまや、仏教思想の領野を確保すべく取り組んだ苦闘の軌跡を尋ね、「戦争責任論」とは異なる視座から、“仏教思想と日本主義”という古くて新しい問いへと迫る。
気鋭の研究者16名による力作書き下ろし論考を結集した、近代日本思想史の一大論集!
〈本書の構成〉
仏教思想と日本主義への入射角――序にかえて(近藤俊太郎)
【総論】日本主義と仏教(石井公成)
第Ⅰ部 親鸞・聖徳太子
真宗大谷派の教学と日本主義――曽我量深を基点として(名和達宣)
真宗本願寺派の教学と日本主義――梅原真隆を通して(内手弘太)
聖徳太子と日本主義――金子大榮を中心に(東 真行)
『原理日本』と聖徳太子――井上右近・黒上正一郎・蓑田胸喜を中心に(中島岳志)
民族主義の体系と形式――三井甲之とその門弟(藤井祐介)
第Ⅱ部 日蓮・禅
日蓮主義と日本主義――田中智学における「日本による世界統一」というビジョンをめぐって(ユリア・ブレニナ)
日蓮主義と日本主義との衝突――日中戦争期における東亜連盟運動(クリントン・ゴダール)
鈴木大拙『日本的霊性』再考――仏教を超える新「日本宗教」(ステファン・グレイス)
臨済宗と「日本精神」――関精拙、古川堯道を中心に(大竹 晋)
禅・華厳と日本主義――市川白弦と紀平正美の比較分析を通じて(飯島孝良)
第Ⅲ部 教養・修養・転向
本居宣長と日本主義――暁烏敏による思想解釈を通して(齋藤公太)
日本回帰の思想構造――亀井勝一郎の場合(碧海寿広)
吉川英治と日本主義――修養する武蔵と親鸞(大澤絢子)
日本主義の主体性と抗争――原理日本社・京都学派・日本神話派(栗田英彦)
親鸞とマルクス主義――佐野学の思想経験を中心に(近藤俊太郎)
まとめと展望(近藤俊太郎・名和達宣)
あとがき――課題としてのX(名和達宣)