「体系」的思考に対して異端をなす、「エッセイ」の思想の根幹-それは、手仕事的な細部へのまなざしである。そこはまた、私たちの「経験」の息づく場所でもあるのだが、もし批判的感性がそのような細部に感応するなら、それは同時に、対象の内部に忘却されたままの、全体性と無限性を予感させるものとなるだろう。そのとき、このエッセイそのものが自身の時代の感覚器官となっていることに、われわれは気づかされる。中断と飛躍を含んだ思考のリズム、巧みに布置された理念やイメージの群れ-。哲学的考察も、これらを恐れはしないのだ。エッセイという形式を、みずからのものとして生きたベンヤミンの、新編・新訳のアンソロジー、第二集。