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  • 著者橘川武郎
  • 出版社白桃書房
  • ISBN9784561712237
  • 発行2020年9月

エネルギー・シフト / 再生可能エネルギー主力電源化への道

新型コロナ・ウイルスは世界経済に大きな打撃をもたらしたが、その衝撃波は、エネルギーの分野にも及んでいる。注目すべきは、エネルギー需要全体が大きく減退する中で、再生可能エネルギー需要が堅調に推移していることである。使用時にCO2を排出するエネルギーから排出しないエネルギーへのシフト、集中型のエネルギー供給システムから分散型のエネルギー供給へのシフトという大きな流れ、つまり「エネルギーシフト(エネルギー転換)」ともいえる動きが改めて明確になったのだ。この勢いは、パンデミックを克服した後の世界では一層強まることになろう。
加速するエネルギーシフトの動きに取り残された感が強い日本政府も、2018年に閣議決定した「第5次エネルギー基本計画」で、2050年までに「再生可能エネルギーの主力電力化」をめざす新しい方針を打ち出した。しかしながら、政府はこの決定にもかかわらず、電源構成見通しにおいて再生可能エネルギーの比率を上方修正せず、以前のままに据え置いた。それを本気で遂行する気がないがごとくである。
本書は、このような状況の中で、「再生エネ主力電源化」を本気で実現するために何をすべきかについて、正面から論じていく。リアルな議論を展開するため、再生エネ発電だけでなく、原子力発電・火力発電・水素利用などの動向も視野に入れ、エネルギー問題を包括的に検討、さらに、「再生可能エネルギー主力電源化への道」それ自体については、(1)既存の枠組みを維持したままのアプローチと、(2)「ゲームチェンジ」を起こす新たな枠組みを創出するアプローチの双方を採り入れる必要があると、この課題に果敢に、かつ冷静に取り組む。
政府機関や自治体の担当者、電力・ガスなどエネルギー産業関係者、またエネルギー事業への参入を狙う方たちにとって必読の書であるが、議論の過程では石炭火力発電「悪者」論や原子力政策の近視眼的なありようも批判しており、エネルギー問題に関する俗論などについて第一人者の見解を知ることもできる。その根拠示しつつ、我々は何をどう選択することができるのかを考えさせる、幅広い読者がそれを自分ごととして捉えるのに有用な一冊である。
【目次】
はじめに:加速するエネルギーシフト
序 章 人類が直面する二律背反
第1章 「再生可能エネルギー主力電源化」と直面する課題:第5次エネルギー基本計画の検討
第2章 再生可能エネルギーをどうするか:主力電力化への二つのアプローチ
第3章 原子力発電をどうするか:カギ握る使用済み核燃料の処理
第4章 火力発電をどうするか:CCSとCCU
第5章 水素への期待:エネルギー構造全体を変える可能性
第6章 再生可能エネルギー主力電源化の担い手は誰か:ゲームチェンジャーの出現
おわりに:「再生可能エネルギー主力電源化」への道

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