なぜ私たちはイノベーションにまで効率を求めてしまうのだろう?
今日のイノベーションの現場を、立場や専門の異なる著者3名がエスノグラフィックに記述し、対話的に思索した野心的著作
●著者紹介
北川亘太(きたがわ こうた)
1986年生まれ。関西大学経済学部准教授,博士(経済学)。国家公務員として二年間働いた後,京都大学大学院経済学研究科博士課程に入学し,制度経済学の理論や調査方法を研究する。それと並行して,学んだ調査方法を自分なりに応用しながらドイツ労働組合やコンサルティング・チーム(UCI Lab.)の現地調査を実施し,現場での出来事を,制度経済学が提示するマクロ経済の趨勢と関連づけて解釈する研究を続けてきた。
比嘉夏子(ひが なつこ)
1979年生まれ。北陸先端科学技術大学院大学知識科学系助教,博士(人間・環境学)。学部時代から文化人類学を学び,オセアニア島嶼社会の経済実践や日常的相互行為について継続的なフィールドワークを行う。並行して企業等の各種リサーチや共同研究にも携わり,人類学的な調査手法と認識のプロセスを多様な現場に取り込むことで,よりきめ細かな他者理解の方法を模索し,多くの人々に拓かれた社会の実現を実践的に目指す。
渡辺隆史(わたなべ たかし)
1977年生まれ。UCI Lab.所長,経営修士(専門職)。学部で国際関係学を専攻し学際的なものの見方を学ぶ。株式会社ヤラカス舘(現 株式会社 YRK and)へ入社し,消費財のプロモーション企画や調査を手掛ける。また社会人学生として立命館大学大学院経営管理研究科経営管理専攻(専門職大学院)で得た研究的な思考態度は現在にも大きな影響を与えている。UCI Lab.設立後は,ユーザーの生活と企業の技術,ビジネスと学術的知見といった相反しがちな事柄を対話的に統合していくような実践を追求している。
UCI Lab.(ゆーしーあい らぼ)とは
「イノベーション・エージェント」として,クライアントであるメーカー等事業会社の新商品/サービス開発の支援を行う専門組織。案件ごとに個別設計されるプロジェクトを通じて,調査からコンセプト創造や市場戦略構築までを一貫して担う。クライアントは化粧品から素材メーカーまで幅広く,研究開発や新事業開発部門が多い。主に質的調査やUX(ユーザー体験)デザインを強みとし,多様な学術研究者や専門家との協働にも取り組んでいる。現在,ラボの構成員は4名。株式会社YRK and(当時社名は株式会社ヤラカス舘)の社内起業として2012年に立ち上げられ,現在は社内カンパニーになっている。