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  • 著者栗原康
  • 出版社新評論
  • ISBN9784794811677
  • 発行2020年12月

アナキスト本をよむ

論壇デビューは書評。これは人文・社会科学系の書き手の共通項かもしれません。いまやひく手あまたの作家・アナキズム研究者、栗原康さんもそうでした。2003年、大学院生のころ、『初期社会主義研究』という堅い雑誌に掲載された書評が、(紀要やミニコミを除いて)活字になったかれの最初のテクストです。本書は、そこから直近まで、約50本の書評や評論を厳選したものです。最新の話題作をめぐるかきおろしもあります。
 栗原さんはいいます。「本がよみたい、本がよみたい、本がよみたい」。学生時代も、年収(月収じゃないですヨ)10万時代も、震災後の混乱期も、コロナ禍の現在も、本がよみたいのだ。仕事ナシ、金ナシで本が買えなくて、時間だけはあるから秘蔵の『大杉栄全集』をなんどもなんどもなんどもよむ。はては音読、写経する。そしたら生が拡充した。その20年間の読書遍歴と評論活動をひもとくと、よむとはなにか、アナキズムとはなにか、ものをかくとはどういうことかが、くっきりとうかびあがってきます。
 あつかう本のジャンルは思想や社会科学にかぎりません。エッセイ(ブレイディみかこさん)、純文学(瀬戸内寂聴さん、笙野頼子さん)、時代小説(中里介山)、仏教書(一遍上人)等々、とても多彩です。なによりすごいのは、いちど腑におちた本=他人のことばが、かれの血肉と化してうたいなおされたあと、奔流となってこの身をさらうこと。あいつづいて、その作品とわたしの実存とが、ぬきさしならぬ関係にあると感じさせてくれることです。たんに内容を要約しただけの味気ない書評とはちがい、それじたいがよみごたえ満点! ちがう景色がみえてくることうけあいです。栗原ファンはもとより、すべての本好きのみなさまと、このよろこび、この興奮、この生の拡充をわかちあえたらしあわせです。(編集部)

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