同じ長屋に住む幸が昨日から帰って来ていない。心配になった縫箔師の咲は幸が働いている茶屋へ出向き、女将から母親の具合が悪く、実方に戻っているので店を休んでいるという話を聞いた。しかも実方は日本橋にある乾物屋だという。幸は親兄弟も親類もみんな亡くし、身寄りはいないはず……。咲は困惑する。そんな折、幸の姉と名乗る女が長屋に現れて──。人々に温もりや安らぎを、との願いを込めて絆を結ぶ、傑作人情時代小説のシリーズ第三巻。