夢枕獏氏推薦
古代史は、巨大な精神の遊園地である。作者はここで自在に遊んでいる。しかも、本書は、「それ、本当かもしれない」という大事なポイントもしっかりおさえているという達人の書である。久しぶりにおもしろい古代史本を読ませていただいた。
さきたま古墳群と大國魂(おおくにたま)神社は、信じがたい精度でもって南北ラインで貫かれている。大國魂神社の社殿は、これも稀らしいことに拝殿・本殿ともに真北の方角を向いていて、つまりその延長線上にさきたま古墳群が座しているのだ。ただし、両者は50キロ以上も離れている。
さきたま古墳群は九基の大型古墳からなるが、最大の前方後円墳は二子山(ふたごやま)古墳と呼ばれ、その中心点と、大國魂神社の拝殿および本殿を貫く中心ラインとが、正確に一致するのだ。
経度であらわすと、まさに東経139.4790とピタリと重なる。
それだけでない。この前方後円墳の古墳群の配置は、なんと星空の北斗七星を模しているのである。
一体どのような人たちが、このような配置に合わせて古墳を作ったのか? あるいは、なぜ星座を模すことが可能だったのだろうか?
これは無名の古墳と小っぽけな神社についての話ではない。さきたま古墳群は「古代東アジア古墳文化の終着点」として世界遺産登録を目指しているほどの陣容で、かたや大國魂神社は、武蔵(むさし)国(現在の東京都・埼玉県・神奈川県の横浜市と川崎市)の総社(そうじゃ)である。その神域は東京ドームに匹敵するほどの広さで、創建は第十二代景行(けいこう)天皇四十一年と、関東でも屈指の古社なのである。
共に、西暦500年代と目される古代史遺産が、いかにしてこのように配されたのか!? この最大の謎をとく!
さらに、日本の古代史を語る上ではかかせない第一級の国宝、獲加多支鹵(わかたける)大王(すなわち雄略天皇)の名前を含む115文字が金象嵌で彫られてあった、世にいうところの〝金錯銘(きんさくめい)鉄剣〟は、このさきたま古墳群から出土したものである。
その金錯銘鉄剣の数々の謎を解き、日本最古の神社を解明し、魏志倭人伝に記された記述の内実に迫るなどいわゆる教科書に記された古代史の真相を大きく塗り替える! 知的刺激に満ちた本来の意味の歴史推理作。