NHKみんなのうた「ソプラノレイン」の原画、森光子「舞台『放浪記』2000回公演記念スーパー・トークライブ」のパンフレット表紙画などを手がけきた毬月絵美の最新詩画集。独特の「彩」で紡ぎ出した46作の心象風景を収録。デリケートでありながら大胆な色遣い“Eternal Color”がアナザーワールドへと誘います。
コクがある絵を描きたい―― 今の私がもとめる心象風景です。モチーフを思い浮かべるとき、イメージの地面に杭のようにささっている感覚。絵の具を塗り重ねて塗り重ねて、面相筆でひと筆ひと筆植えていくように……。
水彩の一番美しい瞬間は、筆から画面に着色して、まだ乾かないで濡れているとき。描いている私が独り占めしている瞬間。その美しさの喜びを見る人にも繰り返し伝えたくて描いてきました。
モチーフを見つめれば見つめるほど描き込みがどんどん増してきて、表現は徐々に変化してきましたが、いつも同じ世界を追い求めて描いた日々。街、季節、花や木、生き物たち、漂う空気の色、生み出したモチーフと話しながら、絵の具の声を聞き取るように……一枚の絵本を描く想いでした。
私の心の写生をご覧いただき、少しでもふわっとした風か香りがたなびいたら、嬉しく存じます。(「あとがき/『彩』によせて」から抜粋)
「彩-SAI-」は毬月さんの画家人生の彩りでもあります。絵に添えられた詩(ポエム)は彩りから生まれた物語(ストーリー)。
本書のテーマは「彩」。当初は「風の彩」「季の彩」「音の彩」「命の彩」という4章立ての構成でした。しかし、毬月さんの絵は一枚一枚すべてに、その要素が入っているのでカテゴリーで括ることはできませんでした。読者の皆さまが、それぞれの視点や感性で毬月作品の「彩」を見つけて、その余韻に浸っていただきたいと思います。(編集部)