「狼の血が流れてるらしいぜ」
狼とともに育った少年キセキ。1万年以上前の縄文時代に繰り広げられる、少年と狼たちの絆と進化の物語。
前作『こんぴら狗』で、第64回 青少年読書感想文全国コンクール課題図書に選定、日本児童文学者協会賞、産経児童出版文化賞(産経新聞社賞)、小学館児童出版文化賞など複数の賞を受賞した作家・今井恭子渾身作。
(著者あとがきより)
いつの時代でも、どこででも、技術や生活における変化というものは、一斉に一様に進むわけではありません。現代でも着々と宇宙旅行への準備をしている人がいる一方で、いまだに電気も水道も使わず生活している人がいます。昔からの伝統的な生活を当然のこととして続けている人々は、技術的には遅れているかもしれませんが、人間として劣っているわけではありません。この作品を書きながら、書いている本人が強く気づかされたことです。それは昨今、頻繁に話題にのぼる多様性への尊重ということに結びつくでしょう。
……狼に興味を持ち、犬を愛する者として、今作でも主人公と狼や犬との強い絆を描きました。縄文時代の遺跡からは、犬が大切にされていた証拠が出てくることを密かにうれしく思いました。