現象学者がケアの現場で聞いた人々の声と哲学の問いとの交差点――。看取りに「だんだん」向かう患者の衰弱、無目的に存在が肯定される大阪・西成の子どもたちの居場所、芥川龍之介「藪の中」に描き出される身体の余白、「まだあったかい」母親の遺体に触れる3人の娘。長年、医療・福祉の現場で人の語りに耳を傾け続けてきた現象学者が人間のうつろいゆく生を素描する、鮮やかな生のポリリズム。