若い女の肌に畢生の刺青を施す江戸の彫師(「刺青)。衛の国の美しく残虐な妃に対峙する孔子(「麒麟」)。女給・ナオミを自分好みに育てあげようとして翻弄される技師(「痴人の愛」)。音曲の師匠・春琴に尽くす弟子の一生(「春琴抄」)。揺るがぬ美意識で問題作を世に問い続けた谷崎潤一郎の戦前の傑作四篇を一冊におさめました。井上靖による「谷崎潤一郎伝」、そして巻末には詳細年譜を収録。明治・大正・昭和にかけての絢爛にして強靭な小説をお楽しみください。