戦前・戦後を通じて、国学者本居宣長への評価は多様を極めた。そして、宣長が同時に優れた小児科の開業医でもあった事実はよく知られているが、国学者宣長と医者宣長との内面的な相補関係については、これまであまり重視されてこなかった。本書はその宣長自身の存在構造の複合性の意味、とくに医者春庵と思想家宣長の統合の問題について考察した。宣長論をわが国精神史における最も象徴的な医・文両全者の視座から試みた劃期的評伝。