• Author田中愽一/著 杣山貴要江/著
  • Publisher学術研究出版
  • ISBN9784910415604
  • Publish Date2021年7月

保育士のキャリア形成と特別支援保育士

 本小論は2つのことを特に学生の皆さんに伝えることを目的にしています。 一つ目は,障害のある人の自立支援について,特に就労に注目しています。保育士は就学前の子どもに出会う機会が多いと思われますが,発達障害や知的障害のある子どもについては生涯にわたって生活支援を要する場合も少なくありません。そのころから保護者は障害のあるわが子の行く末を考え,地域社会の中での生活の工夫を余儀なくされることになります。従って,就学前の段階から保育士は子どもの自立を想定し,障害者雇用の実際を把握しておくことは重要であるという観点から,フィンランドとスウェーデン,アメリカの障害者雇用の実態と比較しながら,インクルージョンを意識した障害者雇用について考察してほしいという意図があります。  二つ目は,保育士養成をしている兵庫大学生涯福祉学部こども福祉学科の教育課程において「特別支援保育士」学修プログラムを設定しました。その成果を5期生のアンケート(特別支援保育士の指定科目について,小児病院実習について等)を分析して検証しました。こども福祉学科に入学した学生の中には医療保育士に関心を持つ人が少なくなく,一般社団法人日本医療保育学会が認定する医療保育専門士を取得する要件である医療機関に就職する卒業生もあらわれてきた実態を見ると,この「特別支援保育士」の学修プロブラムはキャリア形成の一環と言えるのではないかと思うものです。なお,こども福祉学科は大学の改組転換により発展的に解消されることになっています。そこで,国内初の試みであるこのプログラムの成果を文字化して残すことには意義があると考えられたために所収することにしました。

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