パリ文壇にデビューし、初めて民間から起用された日本大使館の文化技術顧問として活躍したフランス留学時代。澁澤龍彦、横尾忠則など多くの若者たちが、その教えを乞いに、フランスの著者のもとに集まった。
マルローの東宮御進講を実現させ、筑波大学では「科学・技術と精神世界」という、研究者としてはタブーであった精神世界に踏み込んだ、国際学会を実現させる。
学問的には異端者と評されることもありがながら、自身の信念のもと、霊性の世界に真摯に対峙し続けた著者の、揺れ動く魂の軌跡をあますことなく書き上げる。
【第八巻あらすじ】
フランス永住計画をも擲って帰国するも、黛敏郎の急逝のあとで、著者は途方に暮れる。が、ある暗合的出来事を知って衝撃を受ける。かつて自分がパリから一本釣りされて転落した一九七四年春は、懼れ多くも昭和天皇が「憂国サイクル」の悲歌を詠みはじめられた時点にぴたり重なっていたという事実である。小我に囚われ、大観に欠けていた己を恥じ、ここから十年間、祖国復興活動に挺身する。
その前半の五年間は日本で、ついで美智子さまの御歌に感激したことから、後半の五年間はパリにリターンして――七十歳と二ヶ月で――その仏訳を成しとげ、セーヌの空に深い感動の木霊を聞く。
反日メディア相手の孤軍奮闘の矛を収めて帰国、三田寺町に隠棲して、ダライ・ラマ法王と邂逅。かつて流浪時代に国際ボランティアとしてカンボジアで活動した折に輪廻転生の驚くべき実験談を聞いたことを想起する。
陋屋に程近い高輪の尖洞仮御所にお引き移りされた上皇陛下后美智子さまの《…寂光に園の薔薇のみな美しく》の御歌に、遠い「ロジエー」の夢を重ね合わせるのだった。
【第八巻の主な登場人物】
皇后陛下美智子様、塚本幸一(ワコール創業主)、椛島有三(日本会議事務総長)、渡邊允(侍従長、『天皇家の執事』)、湯澤貞(靖国神社宮司)、小泉純一郎(首相)、中条高徳(旧陸軍士官、実業家)、櫻井よしこ(ジャーナリスト)、東中野修道(亜細亜大学教授、『「南京虐殺」の徹底検証』)、藤岡信勝(東大教授、新しい歴史教科書をつくる会会長)、伊藤俊也(映画監督、『プライド』)、外山勝志(明治神宮宮司)、フィリップ・ポンス(ル・モンド紙日本支局長)、松浦晃一郎(駐仏大使、ユネスコ事務総長)、小野田寛郎(ルバング島生還旧陸軍少尉)、アニエス・ド・セレーラン(シグナトゥラ社社主、仏訳『セオト』刊行)、ジャン=ジル・マリアラキス(右派論客、ラジオ・クールトワジー)、細波久郎(三島由紀夫体験入隊ゲリラ戦指導教官)、河北倫明(美術評論家)、山口昌子(産経新聞パリ支局長)、平林博(駐仏大使)、ソン・サン(元カンボジア首相、クメール民族解放国民戦線議長)、スベール・サン(ソン・サン次男、著者旧友)、スオン・カセー(ソン・サン麾下女戦士)、セツコ・クロソウスカ・ド・ローラ(画家バルテュス夫人、『グランシャレの美学 言の葉づくし』)、小堀桂一郎(比較文化、東大・明星大教授)