「おまえが可哀想だからじゃない。『友達』だから結婚するんだ。そんな理由じゃ、ダメか?」長い沈黙の後、アカネの目がすっと閉じた。震える手で俺の手を握りかえし、うなずいてくれた。いまは亡き父の一途さと優しさが胸を打つ「父の花嫁」。ファインダーを覗くと、肩を規則正しく上下させるミカコが見える。お義父さんとお義母さんの宝物が見える。俺の妻が見える。俺が好きになった女性は、こんなにも愛されてきた娘だった。かけがえのない人間だった。新妻への両親の愛があふれる「最後の一枚、最初の一枚」。『99のなみだ』シリーズに寄せられた読者の感動的な実話を集めた短篇小説集。