中世の精神文化を代表する偉大な作品といえば、だれでもゴシック大聖堂と共にトマス・アクィナスの『神学大全』をあげる。しかし多くの人は、いわば遥かな時代の記念碑であるかのようにトマスを遠くから眺め、讃え、そしてそのまま行き過ぎてしまう。近づいてその生の声に耳を傾ける人は稀である。本書はトマスの生の声を伝え、読者をトマスその人との出会いに導こうとする試みである。