■編集部からのメッセージ
本書の著者・きたやまおさむさんは、伝説の音楽グループ、フォーク・クルセダーズの一員として、また数々のヒット作を手掛けた作詞家として活躍した後、マスコミの第一線から退き精神科医となった異色の経歴をもっています。現在は、白鴎大学学長も務めています。
「ハブられる」という言葉は、なじみがないと感じる方もいるかもしれません。仲間外れにされる、排除されるという意味で、若い人たちには普通に使われています。
少し前から、同調圧力や「空気を読め」といった流れに息苦しさを訴える声が増えてきたように思います。そして、SNSの普及や現在のコロナ禍において、そうした流れはさらに強まっているのではないでしょうか。
本書は、自分だけがハブられていると感じてしまいがちな心性や、こうした現象が起きやすい日本社会の背景を深層心理学で解き明かそうとするものです。自身の波乱に満ちた人生経験や、精神科医としての現場での臨床経験を存分に活かして解明に挑みます。「鶴の恩返し」や「イザナギ・イザナミ」などの説話・神話に浮世絵、さらには海外の映画作品など、いろんな素材が取り上げられる、著者だからこその「深層心理学」となっています。
本書の中で、著者は人生を演劇としてとらえることを提唱しています。そして、私たちは、悲劇をくり返してしまいがちな「心の台本」を抱えていると指摘します。「鶴の恩返し」の鶴は人間ではないことがばれて「自分さえいなければ」と去って行きます。そうした自己否定と自己嫌悪に満ちた「心の台本」をどう紡ぎ直して、自分らしい人生を見つけて生き残っていくか。読者とともに考えていきます。
担当編集者である私自身が、空気を読むのが苦手であり、そのために感じてきた息苦しさ、苦い経験などを振り返りながら、きたやまさんに多くの質問を投げかけながらつくりました。ぜひ多くの方の手にとっていただき、人生をよりよく生きるヒントとなればと願っています。
(編集部 田中宏幸)