世界的に定評のあるニューラルネットワークとディープラーニングに関する体系的な教科書の日本語翻訳版.幅広い技術の設計思想および応用例が丁寧に解説されており,この分野の全体像を掴むのにうってつけである.
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本書はニューラルネットワークとディープラーニングに関する体系的な教科書である.この分野はまだ新しく,体系的な教科書が少ないなかで,本書はこの分野の全体像をつかむための教科書として貴重である.文章による説明は非常に丁寧であり,数式や擬似コードを用いた形式的な展開ではないため,初学者にも読みやすい.多くの理解を助ける図も与えられている.必要な数学の前提知識は,多変数関数の偏微分と行列の記法程度である.さらに,基礎から応用まで幅広い技術の設計思想が丁寧に説明されており,すでに一定の知識を持つ経験者にもさらなる深い理解を提供するだろう.
原著の発行は2018年であり,その時点までの成果は網羅的に紹介されている.例えばアルファ碁の説明などもよくまとまっている.一方,最近重要性を増している敵対的生成ネットワークは10章で進んだ話題の一つとなっているなど,ここ2, 3年の話題の扱いがやや不十分な傾向がある.また,動径基底関数ネットワーク(5章)や制限付きボルツマンマシン(6章)が詳しく扱われていることが本書の特徴である.
原著:Charu C. Aggarwal, Neural Networks and Deep Learning: A Textbook, Springer, 2018.