古典劇としての歌舞伎には、伝統的でかつ不変の一つの美学があるように思われがちである。しかし、歌舞伎は時代とともに変化し、それぞれの時代の一瞬を生きたものであって、確固不抜の美学などどこにもない。「いま」に生きる歌舞伎美学、私たちの内なる歌舞伎を求め、様式美の氾濫するこの不思議な世界を、キーワードを手に渉猟する、見巧者をめざす人のための歌舞伎入門。