有限な人間の抱える問題とは、それ自身、無限との格闘なのだ!!
アキレスと亀のパラドクスから、カント、ヘーゲル、ヴィトゲンシュタインへ。
カントール、レーヴェンハイム-スコーレムの定理、そしてゲーデルの定理……
古代ギリシアから現代まで、「無限の思想史」を通観する稀代の名編!
アリストテレスは、無限は可能的には存在するが、現実的には存在しないと述べた。数学的な無限は認めても形而上学的な無限は認めなかったのだ。カント、ヘーゲルらの哲学的思考、カントールの集合論の衝撃、ゲーデルの定理などを経てヴィトゲンシュタインへ。古代から現代までを通覧し、「無限」と「死」と格闘した人類の思索を跡づける魅惑の名作。
本書は、無限についての本である。しかしまた、有限についての、我々の有限性についての本でもある。無限についての我々の感覚の背後には、我々自身の有限性についての感覚が位置している。我々は、自分が有限であることを知っている。それは、我々の存在が矮小で短命であるといった問題ではない。それよりももっと根本的なことがらが、ここにはある。すなわち、我々が自分で作り出したのではない世界に投げ出されているという事実、我々が自分ではない他のものと向き合っていることに気づかされるという事実が横たわっているのである。――<本書「序文」より>
※本書の原本は、1996年、東京電機大学出版局より刊行されました。