明治中期の下層民の生活を克明に記録したルポルタージュ。徳富蘇峰の「国民新聞」に連載され、明治26年11月に民友社より刊行された。文明開化に沸き、日清戦争を目前にして「一等国」入りしつつあった明治日本の帝都には、すでに都市開発と経済成長に取り残された「貧民窟」がいくつも形成されていた。「東京論」の一つの視座として、また、現代の「格差社会」を考えるためにも必読の書。巻末解説を坪内祐三氏が執筆。
明治中期の東京に暮らす下層民の生活ぶりを克明に記録したルポルタージュ。明治25年(1892)11月から、徳富蘇峰の「国民新聞」に断続的に連載され、明治26年11月に民友社より刊行された。
「御一新」以来の文明開化に沸き、日清戦争を目前に控えて「一等国」に仲間入りしようとしていた明治日本の帝都の陰には、すでに都市開発と経済成長に取り残された人々が密集する「飢寒窟(貧民窟)」がいくつも形成されていた。そこに生きる人々の暮らしを、住居、食生活、生業から、日々の喧嘩のネタ、ただよう匂いまで、生々しく伝える本作は、横山源之助の『日本の下層社会』とならぶ明治記録文学の傑作である。「東京論」の一つの視座として、また、いまに続く「格差社会」を考えるためにも必読の書。
巻末解説を、坪内祐三氏が執筆。
〔原本:『最暗黒之東京』 民友社 明治26年(1893)刊〕