明治43年夏、例のカイゼル髭の作家夏目漱石は、詰め込んだ大きなカバンをさげて東京・新橋駅を発った。三島駅(現在下土狩駅)で伊豆鉄道に乗り換え、夕刻終点大仁駅に降り立った。伊豆の修善寺は漱石が滞在し病に倒れた地だが、大きな心境の転換を見せ、小説、俳句、漢詩など数々の作品を生みだしたところである。温泉の好きな文豪は、また絵の具箱を担いで出かけたいと言った。人間と社会、自然の観察者・漱石は、伊豆の修善寺で何を見、据えたか。
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