ゴロッと仰向けに寝転んで、猫を顔の上へあげて来る。二本の前足を掴んで来て、柔らかいその蹠を、一つずつ私の眼蓋にあてがう――。豪華な執筆陣による猫にまつわる小説集に、文庫版では内田百閒「ネコ・ロマンチシズム」を増補。気まぐれで不可思議で魅力的な生き物に、夢と現実のあわいへ導かれる全一三篇。〈解説〉福永信
目次
「愛撫」 梶井基次郎
「恋人同士」 倉橋由美子
「海のスフィンクス」 金井美恵子
「ネコ」 星新一
「猫の事務所」 宮沢賢治
「猫貸し屋」 別役実
「猫の首」 小松左京
「お富の貞操」 芥川龍之介
「ドリス」 谷崎潤一郎
「猫」 吉田知子
「猫町」 萩原朔太郎
「猫踏んじゃった」 吉行淳之介
「ネコロマンチシズム」 内田百閒
解説 福永信