デンマークで心理士として働く著者は、近年、デジタル世界とどう付き合えばいいか悩む親子の声を頻繁に耳にするようになってきた。せっかくの家族団欒の時間に、ゲーム機や携帯電話の画面をのぞき込んでばかりいる子、SNSに投稿した写真や動画の反応が気になっていつも上の空で、家族とろくに口をきかない子、ゲーム依存に陥り、部屋に閉じこもって不登校になる子……。
「電源を切ってしまえばいいじゃないか」と世間の人は言うのかもしれないが、ことはそう単純ではない。子どもたちの多くが、学校の授業や家での宿題にタブレットの使用が必須になってきている今のデンマークでは、デジタル機器の使用を禁じるのはかつてほど容易でなくなってきているのだ。
子どもたちがデジタル世界に興味を持つきっかけとなっているのは実は親であると著者は指摘する。親が1日に何度も画面をのぞき込む様子を目にしながら育った子どもたちが、「あれはとても面白いものなんだな。もしかしたら自分たちより大事なんじゃないか」と思うのも無理はない。
さらに著者は、子どもを1人、デジタル機器で遊ばせたままにして、わが子がデジタル世界上の何に興味を持っているのか、知ろうとしない親が増えてきている、と警鐘を鳴らす。
子どもたちのデジタル・ライフに親が興味を持ち、ともにわくわくしながら会話し、楽しみ、子どもの心に寄り添うにはどうすればいいのか、ICT教育先進国デンマークの心理士が実例とともに示す。