天正の少年使節団や支倉常長より早く、当時の大国ポルトガルの都リスボアを訪れた日本人がいた。種子島の鍛冶の娘で、伝来した鉄砲の製法と引きかえに、人身御供同様に嫁がされたのだった。彼女の名ははな、ポルトガル人にはアンナと呼ばれた。-歴史の現場に立ってみようとふと島を訪れた男の目に、初恋の淡い思い出に重なって、歴史に呑みこまれた悲劇の女たちの姿が現われる。