弱った心を踏みにじる奴はこの刀が許さねえ
最近、町人を騒がせている盗賊一味――笹山の閻僧。
定町廻り同心の夏木慎吾は、ここひと月ばかり奴らを追うのに必死で、奉行所で寝泊まりすることも多い。
つい先日押し込まれた漆問屋では、女子供までが皆殺しにされた挙句、金もすべて盗まれたという。
しかし、火付盗賊改方からの報せでは、「大店ばかりを狙い、店の者が気付かぬうちに、潰れぬ程度の金を蔵から盗み取る」のが、笹山の閻僧の流儀らしい。
なぜ、急に変わったのか? まさか偽物が跋扈しているのか?
とはいうものの、「笹山の閻僧の盗みである証に、笹の葉の墨絵を一枚柱に打ち付け、印として残していっている」との報せもあり、混乱した慎吾たち奉行所の探索は難航を極めていた。
血も涙もない押し込みに江戸市中が震えるある日、慎吾が持ち場の高級料亭・松元で働くおもよの前に、行商の元締めをしている平次が姿を現した。
「松元の金蔵のありかを、絵図にしてほしいそうだぜ」
平次が言うには、おもよの父親・金五郎の手伝いらしい。
思いも寄らない真実を耳にしたおもよは――。
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