昨今注目を浴びる自閉スペクトラム症(ASD)の人が持つ感覚過敏をはじめとする感覚の問題に焦点を当てた最前線の研究を紹介する。
目次より
序章 なぜ、いま自閉スペクトラム症の「感覚」なのか?
[1] 自閉スペクトラム症の診断基準の改変
[2] 診断基準で「感覚過敏」「感覚鈍麻」が重要になる
[3] ASD 者の割合
[4] ASD 者の中で感覚の問題をもつ人の割合
[5] 感覚の問題への関心の高まりの背景
第1章 感覚の基礎 25
[1] 外界のシミュレーションとしての感覚
[2] 見たものが意識にのぼるまで
[3] 刺激が強い!と感じるメカニズム
第2章 自閉スペクトラム症者の感覚の特徴
[1] 自閉スペクトラム症者の研究の導入
[2] 弱い中枢性統合理論(WCC)
[3] 知覚機能亢進仮説(EPF)
[4] 外部空間の捉え方の特性
第3章 自閉スペクトラム症者の感覚処理特性のモデル
[1] 高い知覚精度と感覚過敏の結びつき
[2] 感覚プロファイルの開発とDunn のモデル
[3] 個人内における異なる感覚特性の共存
[4] 当事者の体験を実験データから読み解く
第4章 ASD 者の感覚特性の定量化
[1] 刺激への“高い感度”と“慣れにくさ”
[2] 視覚刺激の空間情報の処理
[3] 視覚刺激の運動情報の処理
[4] 音の周波数・音圧の処理
第5章 ASD 者の感覚特性に関連する脳内基盤
[1] 脳波を用いた感覚特性の研究
[2] 感覚鈍麻に関係する脳活動
[3] 脳の領域間の結びつきの強さ
[4] 脳の抑制機能の低下と感覚特性
第6章 過剰な刺激の時間分解能と感覚過敏
[1] 脳はどのように時間を感じているのか
[2] 高い時間分解能と感覚過敏
[3] 時計の秒針の動きを観察する青年
[4] 過剰に高い時間分解能の感覚をまたいだ共通性
[5] 過剰に高い時間分解能の背景にある脳活動の特徴
[6] 過剰に高い時間分解能と脳内のGABA 濃度との関係
[7] 不安が時間分解能に及ぼす影響
第7章 個性的な感覚をもつ人たちの世界
[1] 知覚の基本単位となる時間と空間の情報
[2] 時間と空間の個性的な感覚の表現
[3] 脳の中で結びつく時間と空間の情報
[4] ASD者の感覚特性と共感覚
第8章 今後の科学的研究の展望
[1]「連続した特性」から「重なり合う多様な特性」へ
[2] 感覚特性と社会的側面の特性との関連性
[3] けっきょく障害? 個性? 個人差?