「障害者」とはだれのことか。「障害」とはなにか。わかるようでわからない問題を、いろいろなアプローチでそもそも論から考えます。
[本の内容]
本書の後半では、「障害者差別」についても考えてみました。この「差別」というものも、 まさに「簡単にわかろうとする」ことの方が怖い種類の問題です。だから、私がすべき仕事は、簡単に「わかったこと」にさせないようにしたり、「簡単にわかろう」とはさせないようにしたりすることかもしれません。
というわけで、「はじめに」でも書いたとおり、この本は読み終わった後「障害とはなにか」や「障害者とはだれのことか」が、読む前よりもわからなくなっている本を目指しました。なんとも不親切で意地悪な本かもしれません。なぜなら、本というのはふつう「なにかをわかるため」に読むものですから。
でも、私が心から望んでいるのは、「障害とはなにか」や「障害者とはだれのことか」 について、私と一緒に悩み、モヤモヤと考え続けてくれる人が少しでも増えてくれることなんです。
本書のサブタイトル「『わからない』から(・・)はじめよう」の「から」には、「理由」と「出発点」の両方の意味をこめました。同じような動機で、同じような場所から、私と一緒に歩いてくれる人がいたら、とてもうれしいです。
(本書「おわりに」より)
[目次]
第1部 「障害」とはなにか? 「障害者」とはだれか?
1 制度や法律の歴史から考える
2 理論や理屈から考える
「できる」と「できない」の違いはなにか?
障害学の見地
3 イメージから考える
車椅子が障害者のイメージとつながったのは?
パラリンピックの価値観はオリンピックと同じでいいの?
第2部 「障害者差別」と向きあうには?
1 差別ってなに?
2 障害者運動の神髄
「そりゃそうだけど、それだけじゃない」
「それだけじゃない」から生まれた価値観
3 障害者運動が闘ってきた「差別」
青い芝の会が否定したもの
善意の顔をした差別
4 差別のない社会は可能か?
「差別のない社会」より「差別があったら怒れる社会」
自分の苦しさを声に出す