僕が最初に読んだジョン・アービングの小説がこの「熊を放つ」だ。たしか「風の音を聴け」という小説を書いた(つまりデビューした)直後のことだったと思う。 僕がこの本を手にとったのはカート・ヴォネガット・ジュニアの推薦文が印刷されていたせいもあるのだが、結局この小説を読み終えたあとでは、アービングの小説世界の存在感はヴォネガットのそれをいくぶん圧倒するようにさえなっていた。(訳者あとがきより)