「私は言葉だつた。」
短歌の韻律に乗せて人間存在を徹底的に問うた歌人・山中智恵子。
代表歌集『紡錘』『みずかありなむ』『夢之記』を完本で収録する。
『葛原妙子歌集』(川野里子編)に続く新編シリーズの第2弾!
1600首を収める。
【栞】
小島なお「匣のなかの贈物」
瀬戸夏子「殺害のプロセス」
藪内亮輔「山中智恵子の〈境〉 ──『みずかありなむ』を中心に」
【収録歌より】
うつしみに何の矜恃ぞあかあかと蠍座は西に尾をしづめゆく(『空間格子』)
わが生みて渡れる鳥と思ふまで昼澄みゆきぬ訪ひがたきかも(『紡錘』)
行きて負ふかなしみぞここ鳥髪に雪降るさらば明日も降りなむ(『みずかありなむ』)
その問ひを負へよ夕日は降ちゆき幻日のごと青旗なびく(『みずかありなむ』)
さくらびと夢になせとや亡命の夜に降る雪をわれも歩めり(『虚空日月』)