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  • 著者ナン・シェパード 芦部美和子 佐藤泰人
  • 出版社みすず書房
  • ISBN9784622095293
  • 発行2022年10月

いきている山

〈プラトー(高原)の夏は、美味なる蜂蜜にもなれば、唸りを上げる鞭ともなる。この場所を愛する人々にとっては、そのどちらもが良い。なぜなら、どちらもプラトーの本質をなすものだから。山の本質を知ること。それこそが、ここで私が試みようとしていることにほかならない。すなわち、生命の営みという知をもって理解しようとすること。〉
(「一、プラトー」)
スコットランド北東部のケアンゴーム山群。深成岩塊が突き上げられ、氷と水の力により削られてできた約4000フィート(1219m)の山々。プラトーが広がり、湖や池が点在し、泉が湧く。この地にほど近いアバディーンに生を享けた作家ナン・シェパード(1893-1981)は、生涯、この山に通い、この山を愛した。
ナンの登山は、高さや速さを競うものではない。山の「内側」や「奥地」を求めて山に入る。山に会いに行き、山と共に過ごす。ナンは犬のように山々を歩き回る。五感を解放し、いきている山の営み――光、影、水、風、土、岩、木、草花、虫、鳥、獣、雨、雪、人――に出会い直す。
引き出しにしまわれていたこの作品は、時を経て、運命的に、山を愛する人々により見出された。そして今日、詩性溢れる文章で自然と肉体の交感を語るこの書は、あらゆる表現活動に関わる人々に影響を与えている。ネイチャーライティングの名作。
どれだけ『いきている山』を読んでも、それは私にとって驚きであり続けている。この本に慣れる、などということはないのだ。
――ロバート・マクファーレン「我歩く、ゆえに我あり――2011年版序文」より
シェパードは山の中で「fey[フェイ]」に気づいた、
取り憑かれた、と。
――志賀理江子(写真家)

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