江戸時代の人々が眺め暮らした景色を、今も見ることはできるだろうか。当然のことながら、江戸人が昭和新山の存在を知るはずもなく、また、いくたびも噴火を繰り返す桜島が、かつてはその名のとおり島だった場景を我々が見ることはもはやできない。新幹線も飛行機もない時代に何日も歩いて山に近づき、遮蔽物を排除して俯瞰した視点から描かれたこれらの山岳図は、当時の画家の「このように描きたい」という願望が生み出した産物でもある。時代を超えて胸にせまる日本の名山を、江戸時代の山人谷文晁らが描いた興味津々山岳絵図。