絶望した漫画家は都会でも田舎でもない黄昏の境界へ……
多摩川の中流や、武蔵野線・南武線沿線の地域には、田舎のような郷愁を感じるわけでもなく、下町のような情緒もない、只、時代に取り残された殺伐とした景色が広がっている。早朝の多摩川で対岸の景色を眺めているだけで寂しさがこみ上げてくるような。
『死都調布』作者が漂着した前人未到の旅漫画。
【収録話】
高麗
秋津駅〓新秋津駅
北朝霞
小野路(多摩丘陵)
横浜
羽村市動物公園
江東区
沼南
夏
府中本町
【特別収録】
作者撮り下ろし・カラー口絵8P
縄文ZINE版「武蔵野」
【巻末寄稿】朝宮運河(書評家・『宿で死ぬ 旅泊ホラー傑作選』編者)
不穏さと脱力感、狂気とおかしみ、残酷とおだやかさ。それらが絶妙なバランスで共存し、混在する令和のミステリー・ゾーン。斎藤潤一郎が再発見したそんな武蔵野の姿は、どこか危うさを感じさせる笑い声を響かせながら、私たちを手招いているのである。