美術館や博物館で名品の前に立つとき、いかにしてそれはそこにあるのかと問う人は少くないと思う。本書はその問いに答えるための最初の試みである。私はここで紀元前19世紀から現代に至るまでの13の作品をとりあげた。中には「名品」から「贋作」に転落したケースもある。いずれもドラマチックな経験をしていて、そこに蠢く欲望と理想、個人と国、美術と政治の様相はまことに興味ぶかいと思う。