「心の教育」というあいまいさや「教え込み」から脱却するために――道徳科を未来から考える 本書の概要 道徳が教科となって小学校では4年が経ちます。この間には、過去に類を見ないパンデミックや国際戦争の復権が起き、社会のあり方が大きく変わろうとしています。 激動の時代を迎えるいま、そして未来において、道徳科は現状のままで、本当に子どもたちに生きる力を授けられるのでしょうか。「いまのままでよいのか」と、一度立ち止まって考えてみませんか。 次期学習指導要領を見据え、未来社会から考える「道徳科のあり方」を12人の研究者が再考します。
本書からわかること 不安な時代だからこそ道徳科を学ぶ意義がある 道徳が教科化し、小学校では全国で「特別の教科 道徳」が始まって4年経ちました。 さまざまな実践が積み重ねられている一方で、あいまいな「心の教育」というイメージや教え込みともいえる指導がまだ少なからず残っていると言われています。 一方で、この間に私たちの社会で起きたことを思い返してみると、激動の時代の始まりに立っていることを実感せざるを得ません。世界規模では感染症のパンデミックや国際戦争が起こり、国内では貧困や差別の問題がこれまで以上に浮き彫りとなりました。 VUCA(Volatility(変動制)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字)と呼ばれるこれからの時代を生きていく子どもたちに、「いま」の道徳科はこのままでよいのか。心もとない気持ちにならざるを得ません。
本書では12人の研究者がこうした道徳教育の課題を踏まえ、未来のために必要な変革を提言します。その際、未来の課題を考えるにあたり、子どもたちが社会の構成員として活躍する2040年の社会を想定しています。その未来社会ではどのような道徳的資質・能力が要請されるのか、そのために道徳教育はどうあるべきなのか。 本書が提案するのは、「未来から考える道徳教育のあり方」です。
だれが、どのように、なにから、何のために学ぶのか 先に挙げたようなこれからの時代の姿を考えると、教え込みや徳目的な教育方法だけでは、子どもたちが未来を生きるための羅針盤を育てることは難しいでしょう。ビッグデータの中から最適解を機械的に探すような方法でも、当然太刀打ちできません。 諸課題を解決するために自分なりの解決策をもちながらも、他者と折り合いながら生きていく必要があるからです。そうした力を培うための道徳教育のあり方を、それぞれの専門から以下のテーマで考えます。
道徳教育の主体はだれなのか、どのような方法が考えられるのか、なにから学び、そして何のために学ぶのか。「道徳教育のあり方」を読者とともに考える1冊です。