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  • 著者カール・マルクス カール・アウグスト・ウィットフォーゲル 石井知章
  • 出版社白水社
  • ISBN9784560094945
  • 発行2023年4月

一八世紀の秘密外交史 / ロシア専制の起源

「ロシアが欲しいのは水である」
 資本主義の理論的解明に生涯を捧げたマルクス。彼はこの『資本論』に結実する探究の傍ら、1850年代、資本の文明化作用を阻むアジア的社会の研究から、東洋的専制を発見する。
 他方、クリミア戦争下に構想された本書で、マルクスはロシア的専制の起源に東洋的専制を見た。ロシア社会の専制化は、モンゴル来襲と諸公国の従属、いわゆる「タタールの軛」(1237-1462)によってもたらされたと分析したのである。
 このため、マルクスの娘、エリノアの手になる本書は歴史の闇に葬られ、とりわけ社会主義圏では一切刊行されなかったという。
 とはいえ、東洋的専制という問題意識は、その後、本書の序文を書いたウィットフォーゲルによって深められた。
 フランクフルトの社会研究所で頭角を現した彼は、『オリエンタル・デスポティズム』(1957年)に収斂していく研究で、専制の基底に大規模灌漑を要する「水力世界」を見出し、さらに、ソ連・中国の社会主義を東洋的専制の復活を見た。
 ウクライナ戦争が長期化する中、ロシアの強権体質への関心が高まっている。本書は今こそ読まれるべきだ。

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