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  • 著者関山健
  • 出版社日経BP
  • ISBN9784296118137
  • 発行2023年5月

気候安全保障の論理 / 気候変動の地政学リスク

気候安全保障とは、気候変動が遠因となって起きる紛争や暴動から国や社会を守ることである。気候変動は「脅威の乗数」だと言われる 。気候変動は、それに伴う異常気象や自然災害が人や社会にとって直接的な脅威となるだけでなく、他の様々な経路を通じて間接的にも人間社会の平和と繁栄に対する脅威を増幅しうる。
 直接的な脅威としては、気候変動が人の心身に作用したり水資源等の不足を招いたりすることで、紛争のリスクを高めることが危惧される。軍事面では沿岸の基地の水没リスクに直面している。
 一方、間接的な経路としては、気候変動が食料生産や経済社会生活などに影響をおよぼし、それによって引き起こされる食料価格の上昇や大規模な人の移動などが紛争のリスクを高める可能性が指摘されている。本書は、そうした気候変動と紛争との相関関係について、詳しく解説するものである。
 気候変動が紛争のリスクをどの程度高めるかは、その因果の経路が直接的であれ間接的であれ、その国や地方の経済発展レベル、行政能力、その他様々な社会情勢によって異なりうる。本書では、こうした気候変動の脅威に対する各国ないし地域の脆弱性や適応力を左右する背景要因についても検討する。 
  日本では、つい最近まで気候安全保障あるいは環境安全保障という概念に馴染みが薄いとされてきた。一方、国際社会では、環境保護主義者のみならず、世界の安全保障専門家も気候変動や環境変化がもたらす脅威に注目している。たとえば国連安全保障理事会では、2007年以来、気候変動、資源や水の希少化、生態系変化などの問題が安全保障に与える影響について議論を重ねている。また EUも気候変動が世界中の多くの紛争の遠因となっているとの認識を示している。こうした背景から、気候変動と紛争との関係に関心を寄せる学術研究も,過去10年ほどの間に飛躍的に増加している。
 しかし、気候変動と紛争との関係については、未だ不明な部分が多い。気候変動が紛争を引き起こすとすれば、どのようなメカニズムによるのか? 気候変動が紛争に結びつく特定の条件があるのだろうか? 気候変動が遠因とされる紛争とは、どのような事例なのであろうか? 世界各地は、今後数十年内に、どのような気候安全保障リスクに直面する可能性があるのだろうか? 
 本書は、気候安全保障に関する既存研究の知見をもとに、こうした問いに答えるものである。

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